9月に泊まった由布院「亀の井別荘」の部屋には
手すきのようなオリジナルレターーセット、筆ペンの脇に
温かい灯かりを燈すクラシックな風貌のスタンドがあった。

まるで、ここに泊り込んで小説でも書き上げる人を
撮影するのに用意されたような
絵になる雰囲気のある色光で、息子が眠ってから、
カバンに詰めて来た小説を掴んで再び隣室の部屋へ戻り、
スタンドの明かりを燈して本をパラパラとめくってみた。

浴衣などは脱いで
首元までびっしり小さなボタンがついている白いブラウスに膝丈のフレアスカート
竹久夢二が描くような華奢な女性がカーディガンを肩から羽織って小さな夜を
この部屋でひとり伏し目がちに弄ぶのが似合いそうだな、と思った。

一目惚れしたスタンドを裏返してみると『松本民芸家具』と記してあった。
九州の家具ではなくて長野の有名な家具だったが、
魂を感じるような職人の『本物』に出会える宿で
刻一刻、時間を過ごしていくのが嬉しかった。

http://matsumin.com/20_hist/21_chrn/21_chrn.html

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