ここには雄大な山がふたつ、そして日本海がある。この山々は冬にデットゾーンと化し、また、海はポセイドンの怒りのごとく荒れ狂う。しかし、時に人を癒し包み、その出入りを許すのだ。

 わたしはこの「山と海」に、魂から憧れる。自分も、こんな風でいたい、と心から願う。幾ら雑然とする人間社会の日常的で起こる摩擦に遭っても、人間に媚びないでいたい。このまま無骨で、やさしく厳しく、時に崩れる姿も隠すことなく、悠然と胸から響いてくる太い声に従い、自分らしく生きる姿を堂々と持っていたい、と強く思う。

 動物でいうと、昔から「鯨と象」が大好きだ。彼らを深く深く愛する。大らかでやさしげ、ゆったりとして、カタチが不変で太古然、瞳がやわらかい。そう、あんな風でいたい。

 ただ今、宇宙に浮かんでいる星にいて、地球上の日本という資本主義を執る国の、ある家の青い自室で、アイス好きの母が自分用に買っておいたチョコバナナ味のモナ王を盗み食いしながら、この日記をつけている。

 息子が健やかな深い寝息を立て、安らかさが響き渡る。日々反復するような彼の毎日に見えても、急成長する命の勢いを感じさせている。たくさん泣き天使のように笑って、魂の弾力が増す。

 DNAに逆らう術もない人間もまた、神々が残す美しい指紋だ。この命も魂も遺伝子の流れを受ける。お金に負けることは、ない。正しく求めて生きるところに、正しく物事は与えられる。

 上と下がある。右と左がある。物事は、最低二面から量られる。しかし、寸部も狂わず、それはつながっている。小さく必要としているものに、大きく与えられることはない。たとえ、間違いがあっても、正しくろ過され削がれていく。

 追求すれば、やっぱり真理はひとつに尽きるんだろう。

 先日やっとこさ結婚したのに、嘯き浮気をやめない彼は、きっと離婚する。裏切りの香りに、新妻の鼻が痛み始める。昇進を願う彼はタイムリミットまで見込めず、きっと転職する。打算が目立つことを、取締役は心得ている。

 欲張りは、欲張りな匂いを放っていることを知らない。

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